警察犬や軍用犬・災害救助犬など、様々な場面で活躍する「シェパード」は私たちにとってかけがえのないパートナーといっても過言ではありません。
一般的に「シェパード」というと「ジャーマン・シェパード」を思い浮かべることが多いですが、実はそれ以外にも様々な種類のシェパードがいるんです。昔から牧羊犬や護畜犬など、ワーキングドッグとして様々な仕事をこなしてきた「シェパード」達は賢く、運動能力や適応力に優れている犬種ばかり。
今回は、有名な「ジャーマン・シェパード」をはじめ、「シェパード」と呼ばれる29種類の犬種を、画像や動画でご紹介します!
その多種多様さに目からウロコが落ちること間違いなしですよ!
この記事でわかること
- 29種類のシェパード
- 「ジャーマン・シェパード系」とそれ以外の「シェパード」
- 各犬種を公認している畜犬団体
シェパードには様々な種類がある
犬の種類は国際畜犬連盟に登録されているだけでも350種類以上になり、登録されていない犬種も入れると1000以上だとか数千以上もあると言われています。
その中で、それぞれの先祖をさかのぼってみると以下の4系統に分けられます。
馴染み深い「ジャーマン・シェパード」は左から2番目の「マトリス・オプティマエ」を先祖とする系統に属していて、いわゆる牧羊犬・牧牛犬と呼ばれています。
「ジャーマン・シェパード」以外にもコリーやコーギーなど優秀な作業犬たちがこの系統に属しています。
「シェパード」と名付けられた犬種には、「コリー」「コーギー」「ジャーマン・シェパード」などから繁殖された犬種もいますが、一番左端の「イノストランツェヴィ」系の犬種が「シェパード」と名付けられているケースもあります。
「イノストランツェヴィ」系は主にマスティフ系と呼ばれ、大型で力強く牧羊犬以外にも番犬や闘犬として活躍した犬種もいました。
上記をふまえながら、ここでは「シェパード」と名付けられた以下3タイプの犬種をご紹介していきます。
- 「ジャーマン・シェパード」系のシェパード
- 「ジャーマン・シェパード」系以外の「マトリス・オプティマエ」タイプのシェパード
- 「イノストランツェヴィ」系のシェパード
ジャーマン・シェパード系のシェパード
まずはお馴染み「ジャーマン・シェパード」や、繁殖にジャーマン・シェパードが用いられた犬種を紹介します!
オールド・ジャーマン・シェパード・ドッグ(Old German Shepherd Dog)
「オールド・ジャーマン・シェパード」はドイツに昔から土着していた犬種で、これから紹介する「ジャーマン・シェパード系」の先祖になります。
ジャーマンシェパードよりも体格がガッシリしている傾向がありますが、牧羊犬・牧牛犬として性格・スピード・スタミナといった能力重視で繁殖されたため、毛色やコート(被毛)や体の大きさはバラエティに富んでいるのが特徴。
世界の主要な畜犬団体には犬種登録されておらず、数が減少しているためドイツで絶滅危惧種に指定されています。
ボヘミアン・シェパード・ドッグ(Bohemian Shepherd Dog)
オールド・ジャーマン・シェパードを生み出す時に関わったとされるボスニア・チェコ原産の牧羊犬です。現在のジャーマン・シェパードもボヘミアン・シェパードの血を引いています。
「ボスニアン・シェパード」や「ホドスキー・ペス」とも呼ばれているこの犬は、性格が明るくフレンドリー。ジャーマン・シェパードよりも小柄な中型犬で、十分な運動や人との関わりを満たせれば屋内飼育も可能です。
ジャーマン・シェパード・ドッグ(German Shepherd Dog)
お馴染みの「ジャーマン・シェパード・ドッグ」です。ドイツの軍用犬として、「オールド・ジャーマン・シェパード・ドッグ」から繁殖され、現在では警察犬・災害救助犬・麻薬探知犬・軍用犬・盲導犬など、様々な分野で活躍しています。
忠誠心が高く、子犬期からの社会科や適切なトレーニングによって良き家庭犬として過ごすこともできます。
ホワイト・シェパード・ドッグ/ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ(White Shepherd Dog)
ホワイト・シェパード・ドッグは、ジャーマン・シェパード・ドッグから稀に生まれる白色種が本家ドイツや国際畜犬連盟(FCI)などからミスカラーとされていたため、白限定の独立犬種として固定したのが始まりです。
犬種が固定化される過程で改良も加えられ、上記のジャーマン・シェパード・ドッグよりも性格の優しさや腰が丈夫な傾向があります。
国際畜犬連盟(FCI)とジャパンケネルクラブ(JKC)では、スイスから輸入された『ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ』が登録されています。
対して、アメリカンケネルクラブ(AKC)では『ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ』ではなく、『ジャーマン・シェパード・ドッグの白色種』が認められています。
シャイロ・シェパード(Shiloh Shepherds)
「ジャーマン・シェパード」はとても優秀な犬種ですが、古き良き「オールド・ジャーマン・シェパード」の精神面や体格面での安定性が失われているのも事実です。
そんな元来の『オールド・ジャーマン・シェパード」の姿を蘇らせるべくアメリカで繁殖されたのが、この「シャイロ・シェパード」。
「オールド・ジャーマン・シェパード」の精神面・体格面などを蘇らせているため、遺伝病も少なく健康的で穏やかな性格や丈夫な腰を持っています。そのため、警察犬や軍用犬というよりも介助犬や補助犬などで活躍するケースが多いのが特徴です。
この犬種は、世界の主要な畜犬団体ではなく小規模な独自の畜犬団体で管理されています。
ダッチ・シェパード(Dutch Shepherd)
オランダ原産でブリンドルの毛色が特徴的な牧羊犬です。牧羊犬とは言っても作物の番犬や牧羊犬、荷車を引く作業犬などあらゆる仕事を任された万能犬として活躍しました。
頭が良く活発で少々頑固な一面もありますが、元々様々な才能をさせていただけに現在は警察犬や災害救助犬、盲導犬などあらゆる場面で活躍しています。
犬種としては、国際畜犬連盟(FCI)やアメリカンケネルクラブ(AKC)で認められています。また、被毛タイプごとに以下の3種類にわかれます。
ダッチ・シェパードの3タイプ
- ラフヘア(コースヘアード)
- ショートヘアード
- ロングヘアード
それぞれの特徴を簡単に紹介します!
コースヘアード(Rough-haired)
コースヘアードはワイヤーコートといって、雨や雪、強い風や、逆に夏の暑い気候からも体を守ってくれるゴワゴワした毛や口ひげが特徴的です。ダッチ・シェパードで一番最初に生み出されたタイプで、この種類を元に他の2種が生み出されました。
コースヘアードは主に牧羊犬として活躍していましたが、手入れが簡単なショートヘアードや美しい被毛が魅力的なロングヘアードの人気に押されて飼育する人が少なく、あまり見かけないタイプとなっています。
ショートヘアード(Short-haired)
ショートヘアードはその名の通り、短い毛の種類です。
短毛ですがダブルコートなので寒さや雨にも耐えることができ、コースヘアードやロングヘアードのような手入れの煩わしさもありません。さらにダッチ・シェパードの知性や能力はしっかりと受け継がれていることから、牧畜犬以外にも回収犬や警察犬・麻薬探知犬・盲導犬など様々な作業犬として活躍しています。
3種のダッチ・シェパードの中で一番人気が高いタイプです。
ロングヘアード( Long-haired)
ダッチシェパードの中では一番毛が長い種類です。美しいロングコートが特徴的で、牧羊犬などの作業犬としても活躍しています。
被毛の美しさを維持するため、日々のお手入れは欠かせません。その手入れの大変さが原因で一時は飼う人がいなくなり絶滅しかけましたが、その美しさや性格の良さから、現在はショードッグや家庭犬として飼育されています。
ピカルディ・シェパード(Picardi Shepherd)
フランスのピカルディ地方原産の牧羊犬です。ダッチ・シェパードとの血統的な関わりがあるとされています。基本的に家畜の誘導や護衛を行いますが、頑固で気難しい傾向があるので適切な訓練が必要です。
適切な社会化や訓練をすれば、フレンドリーで家族以外の人間や犬とも仲良くできるようになります。
現在でもフランスで主に飼育されていて、国際畜犬連盟(FCI)やアメリカンケネルクラブ(AKC)で公認されています。
アメリカン・ツンドラ・シェパード(American Tundra Shepherd)
アラスカのツンドラオオカミとジャーマンシェパードの掛け合わせで生まれた、いわゆる『ウルフドッグ』です。
元々アメリカ政府のプロジェクトとして軍用犬にする目的で繁殖されましたが、攻撃性は高くなく穏やかなため軍用犬としての活躍はせず、現在は愛好家の手によって飼育されています。
トレーニングをしっかりとすることで、家族を守り愛する良きパートナーとなると言われています。
ただし、オオカミの血が混ざっているため飼育には厳重な注意が必要です。
イースト・ヨーロピアン・シェパード(East European Shepherd)
旧ソ連下のベラルーシで、ジャーマン・シェパードから生み出された犬種です。
極寒の地で耐えるための分厚い被毛や丈夫な腰を定着させるため、セントラル・エイジアン・シェパードやロシア原産の犬種と掛け合わされて繁殖されました。そのため、ジャーマン・シェパードより大柄でガッシリした体格が特徴です。
また相手の嘘を見抜くほど賢いため、旧ソ連の正式な軍用犬として活躍していただけでなく、この犬種のブラック(黒色種)は伝統的にクレムリン宮殿の警備を任されているほど信頼されています。
この犬種は世界の主要な畜犬団体には犬種登録されておらず、ベラルーシなど東欧地域でのみ飼育されています。
キング・シェパード(King Shepherd)
ジャーマン・シェパード系の中で最大級の大型犬「キング・シェパード」です。大型で頑丈なシェパードを生み出すべく、1990年初頭にアメリカで以下のような犬種を掛け合わせて繁殖されました。
まだ世界の主要な畜犬団体には犬種登録されていません。
- アラスカン・マラミュート
- グレート・ピレニーズ
- シャイロ・シェパード
- ヨーロピアン・シェパード
猛々しい見かけとは裏腹にとても穏やかで家庭犬にも最適です。
「マトリス・オプティマエ」系のシェパード(ジャーマン・シェパード系を除く)
続いて、「マトリス・オプティマエ」グループに属する、ジャーマン・シェパード以外のシェパードを紹介していきます。
オーストラリアン・シェパード(Australian Shepherd)
オーストラリアンとは名ばかりで、実際はバスク地方から羊飼い達と共にオーストラリアを経由して、アメリカに移動した牧羊犬です。様々な犬種と交配しながら、カリフォルニアで独立犬種として確立されました。
外見の美しさ、高い社交性、頭脳明晰、パワフルなスタミナ、全てにおいて優秀なオーストラリアン・シェパードは、世界中で高い人気を誇っています。
バスク・シェパード(Basque Shepherd)
オーストラリアン・シェパードの大元の故郷「バスク地方」の土着犬で、古来から牧羊犬・牧牛犬として活躍してきました。12000年前の洞窟からバスク・シェパードと思わしき痕跡が発見されていて、非常に古い時代から人間と暮らしてきたことがわかります。
その原産地や歴史の古さから、上記のオーストラリアン・シェパードの先祖と言われていて、とてもフレンドリーで愛情豊かで世話好きなのが特徴。子供がいる家庭でかけがえのないパートナーとなります。
世界の主要な畜犬団体には公認されていませんが、原産地バスク地方やアメリカなどでも人気の犬種です。
ベルジアン・シェパード(Belgian Shepherd)
ベルギー生まれの大型の牧羊犬です。もともと能力重視で繁殖されたため特徴がバラバラでしたが、保存活動が行われる際に以下の4タイプが確立されました。
ベルジアン・シェパードの4タイプ
- グローネンダール
- タービュレン
- マリノア
- ラケノア
保護活動はそれぞれ名前の由来となった地域別で行われたため、タイプによって特徴が異なります。ただし、全体的に家畜や家族を守ろうとする本能や警戒心があり、能力の高さや賢さを持ち合わせているのが特徴です。
以下の2つの畜犬団体では、上記の4タイプを分別せずに1つの「ベルジアンシェパード」として認定しています。
グローネンダール(Groenendael)
グローネンダールが繁殖された、ベルギーのグローネンダール村にちなんで名付けられました。美しい漆黒の長い被毛が特徴で、ベルジアン・シェパードの中でも穏やかで子供とも過ごせる上に才能あふれるので、国内外問わず人気No.1です。
タービュレン(Tervueren)
タービュレンが繁殖されたベルギーのタービュレン村にちなんで名づけられました。被毛タイプや外見はグローネンダールと似ていますが、毛色がブラウンとブラックのブラック・オーバーレイとなっているのが特徴です。グローネンダールに次ぐ人気の高さです。
マリノア(Malinois)
マリノアが繁殖された、ベルギーのメッヘレン町にちなんで名付けられました。ベルジアン・シェパードの中では唯一のショートコートで、他の3タイプがショードッグとしても活躍するのに対し、マリノアは警察犬や軍用犬などワーキングドッグとして活躍するケースが多いです。
近年では、2019年にアメリカ軍特殊部隊がISILの襲撃作戦にもマリノアが参加し、トランプ大統領から英雄として讃えられています。
ラケノア(Laekenois)
YouTubeでラケノアの動画を見つけましたのでご覧ください。
ベルジアン・シェパードの中では数が少なく、日本でも世界でも希少種です。ラケノアが繁殖されたレーケンセ地方にちなんで名付けられました。カールの効いたラフヘアが特徴的で、ショードッグとして活躍することが多いです。
イングリッシュ・シェパード・ドッグ(English Shepherd Dog)
元はイギリスの犬種ですが、アメリカへの開拓移民と共にアメリカへ渡り繁殖されました。自給自足の開拓移民の生活で必要なあらゆる仕事を任されていたため、オールマイティなワーキングドックとして高く評価されています。
ただし、能力重視で繁殖されて外見がバラバラなので、世界畜犬連盟(FCI)やアメリカンケネルクラブ(AKC)など主要な畜犬団体ではなくユナイテッドケネルクラブ(UKC)で認定されています。
カルスト・シェパード(Karst Shepherd)
スロベニアのカルスト地方を原産とする犬種です。他の多くのシェパードが家畜をまとめたり誘導する牧羊犬であるのに対し、カルスト・シェパードは家畜をオオカミなどの外敵から守る役割を果たしていました。
そのため防衛本能や警戒心が強く、強敵に立ち向かう勇敢さがあります。ただし、コントロールが難しいため一般家庭での飼育には向いていません。
冷戦後の紛争で一時絶滅しかけましたが、生き残ったカルスト・シェパードの保護活動により数が増えてきています。現在はスロベニアの天然記念物として大切に飼育されています。
カルパチアン・シェパード・ドッグ(Carpatian Shepherd Dog)
ルーマニアのカルパチア山脈原産の牧羊犬です。先祖犬は諸説ありますが、オオカミに似た容姿から一部の専門家ではカルパチアオオカミの血が入っていると推測しています。
カルパチア山脈でオオカミやクマ、ワシといった天敵から家畜を守る仕事をしていて、命がけで敵に向かっていく勇敢さがあり頼りがいのある用心棒として活躍しました。
世界大戦によって一時期頭数が減少しましたが、現在は様々な国で飼育されていて数を増やしています。また、正式な犬種として世界畜犬連盟(FCI)で認定されています。
ミオリティック・シェパード・ドッグ(Mioritic Shepherd Dog)
カルパチアン・シェパードと故郷を同じくするこの犬種は、目まで隠れる長毛が特徴的です。縄張り意識がとても強く、家畜や家族に危機が迫ると命がけで戦うので家畜を天敵から守る護畜犬として活躍していました。
しかし警戒心が強い反面子供には優しく、見知らぬ人や犬でも敵でないとわかるとフレンドリーに過ごすことができます。そんな賢さがあるからか、ルーマニアでは、一般家庭だけでなく権力者からも好まれています。
「イノストランツェヴィ」系のシェパード
続いて、マスティフ系やブルドッグ系、北極系の犬種が集う『イノストランツェヴィ』でシェパードと呼ばれている犬種を紹介します。
サウス・ロシアン・シェパード・ドッグ(South Russian Shepherd Dog)
ウクライナ原産で、家畜を襲ってくるオオカミや泥棒などに勇敢に立ち向かい、かつ家畜の誘導も任されていた牧羊護畜犬です。羊のような可愛らしい外見ですが防衛本能が強く攻撃性もあるため、プロのトレーナーに訓練してもらう必要があります。
軍用犬や警察犬としても活躍している犬種なので、しっかりとトレーニングをしてコミュニケーションをとることで頼もしい用心棒となります。
少々扱いづらい犬種なためか、世界畜犬連盟(FCI)には公認されているものの、原産国のウクライナやロシア以外ではほとんど見かけません。
アナトリアン・シェパード・ドッグ(Anatolian Shepherd Dog)
トルコ原産のマスティフ系シェパードです。厳密には家畜を誘導する牧羊犬ではなく、外敵から家畜を守る護畜犬としての役割を担っていました。
外敵への警戒心はありますが、状況判断力に優れていて家族や家畜に危害を加えない人や犬には警戒心を解き、仲良く過ごすことができます。基本的に穏やかな性格ですが、超大型犬ということもあり子供や小動物がいる場合は注意が必要です。
セントラル・エイジアン・シェパード
準備中
コーカシアン・シェパード・ドッグ
準備中
タトラ・シェパード・ドッグ
準備中
ベルガマスコ・シェパード
準備中
マヨルカン・シェパード
準備中
まとめ
今回は、名前に『シェパード』が入っている犬種をまとめて紹介しました。
これらの犬は、基本的に自分の判断で牛や羊などの群れを誘導し、オオカミやヤマネコなどの天敵から群れや飼い主を守ってきた歴史があります。そのために、主人の指示にしっかりと従う忠誠心がありながらも、状況を読み取って臨機応変に仕事ができる犬種が実に多いです。
しかし、それだけ頭が良いということは、主人がリーダーに相応しいかどうかを見極める思考力もあるということ。もしこれらの犬種を『飼う予定があるけどトレーニングに自信がない』という場合は、プロのトレーナーにトレーニングしてもらいましょう。
しっかりとトレーニングを行えば、かけがえのない素晴らしいパートナーとなってくれるはずです。